神社とおじさん

渡邊朱倫
2020 年 12 月 28 日

広島県道 72 号福山沼隈線は福山市水呑町の荒谷(あらいだに)団地から所謂沼隈半島を横断して沼隈町平迫(ひらさこ)に通じている。内陸の一般道だが、荒谷側以外は極端な勾配が少なく、体力があればシティサイクルでも往来できる。途中に熊野町という地名があるので熊野道とも呼ばれるが、勿論紀伊や安藝の「熊野」とは異なる。

この街道沿いは小さな盆地のような地形が多い。そういう盆地は田園と一戸建ての民家で占められているが、社宅のような建物も見かける。それから、とにかく商店の興廃が激しい。喫茶店、レストラン、コンビニ等の跡がやたら多い。

十代後半の頃は通学用自転車であちこちに出かけるのが趣味だった。いつだったか、志田原か熊野近辺の小高い丘の上にある、小さな神社で休憩をとった。立ち止まって飲料水を飲む為だったと思う。年配の方に声をかけられた。

――おまいさん、どの辺から来たん?

――神社の勉強でもしてけえ。

こんな会話だったと思う。少し鈍臭いおじさんの言葉からは、神への畏敬は余り感じられなかった。自分の返事は忘れた。

イザナギだったかスサノヲだったか、男神を祀る神社だったと思う。私は当時福音派キリスト教徒だったから、手も浄めていないし、二礼二拍手一礼も行っていない。但、他者としての神道には興味があった。今はキリスト教の神も神道の神も信じていないが、そんな今とて歴史的な存在としての宗教に全く目を反らしていない訳ではない。

今、Google のストリートビューで熊野町近辺を眺めても、あの周辺は神社が多いので特定しにくい。

2020 渡邊朱倫